Good Night Baby
ふいに、小さく空気が流れて目を覚ました。
暗闇の部屋の中、まるで猫のようにゆっくりと静かに、誰かが布団の中に潜り込んでくる。
こんな風に布団に潜り込んでくるやつは、一人しかいない。
「……クラピカ」
小さく名前を呼ぶと、ぴくんと身体が跳ねた。
「……どうした?」
「……起こしてすまない」
「いや、それは気にしなくていいんだけどよ」
こんな夜中に連絡もなしに、しかも何時間もかけて飛行船で来るなんて、何かあったに違いない。
だからと言って問いただしても、絶対言わないんだよな、コイツは。
まあ、おおかたの予想はつくが。
どうせ、食事も睡眠もまともに摂らないで仕事してて、見るに見かねたセンリツに無理やり休みを取らされたってとこだろ。
何で、そういう無茶をするかな。
「……とりあえず、布団に入れ。 寒いだろ?」
「……すまない」
もそもそと申し訳なさそうに、布団に潜り込んできたクラピカの頭を強引に左腕に乗せて、空いている右腕でクラピカを抱きしめる。
「レ、レオリオっ」
途端に、自分の身体に巻き付いた俺の腕を引き剥がそうとジタバタ暴れだした。
だから、何で今更抵抗すんのかなぁ。
今までこうやって何度も眠ってるのに。
おまけに、俺の足に触れたクラピカの足は氷のように冷たくて。
抱きしめた身体は痩せ細って。
ったくどうしてコイツは!
説教の一つ二つしてやりたいところだが、今はコイツを休ませるのが先決だ。
「もう、いいから寝ろ。 長時間飛行船に乗ってきたから疲れてるだろ?」
「……すまない」
「謝らんくてもいいから、とりあえず寝ろ」
「……」
俺の強気な口調に静かになったクラピカの身体から力が抜けるのには、そう時間はかからなかった。
子供をあやすように、背中をポンポンと規則正しく叩いてやると、鼻を啜る音が聞こえた。
クラピカの頭が乗った左腕が湿って温かい。
泣きたい時には泣いちまえ。
俺は涙に気付かないふりをして、背中を叩き続けた。
そのうちに、小さくしゃくりあげていた呼吸が寝息に変わる。
眠りについたクラピカの身体を抱きしめたまま、俺の思考は明日に飛んでいた。
俺のとこに来たってことは、休暇は短くても三日はあるだろう。
たかだか一日や二日の休みだったら、俺のところに来るとは考えにくいしな。
センリツに感謝だな。
どうせまともな食事なんて摂ってないだろうから、俺のところにいる間は一杯食わせないと。
とりあえず明日の朝食は、昨日買ってきたパンがあるから、チーズトーストに……。
いや、糖分を取らせなきゃならんから、バターにイチゴジャムだな。
あと野菜スープと、クラピカの好きなミルクティーと、卵……卵は目玉焼き……オムレツにしよう。
オムレツにチーズを入れて、デザートのヨーグルトにバナナを入れて、鉄分補給にレーズンを散らして……。
まるでクラピカの専属栄養士みたいだと、思わず笑っちまう。
刹那、クラピカが動いた。
しまった、起こしちまったか。
けど、もそもそと動いて、俺の胸元に顔を埋めてまた動かなくなった。
さっきまで冷たかった足も温かくなってる。
やれやれ。
ほっとしたせいか、俺も眠くなってきた。
明日、クラピカに何日いられるのか聞き出して。
ゆっくりと休ませて送り出そう。
俺が出来るのはそれだけだから。
おやすみ、クラピカ。
俺のそばにいる時は、何も考えずにぐっすり眠れ。
久しぶりの短編。
寒さで降ってきたネタ(笑)
いつも頑張ってるクラピカだって、心が折れそうになることもあるはず。
そんな時にはレオリオがいるよ。