背中から抱きしめて



 春の紅茶色の夕日の中、あたしは手摺に頬杖をついて屋上から海を眺めてた。

 少し落ち込んでる。

 昼間の出動の時のちょっとしたミス。

 些細なミス。
 でも落ち込んでしまった。

『あんなミス、太田に比べりゃ大した事無い』

 遊馬はそう言ってくれたけど、あたしは納得いかない。

 些細なミスでも。ミスには変わりない。



 階段を上がってくる足音。

 誰の足音かすぐにわかる。

 あたしの後ろで足音が止まった。



 あたしは振り向かない。

 落ち込んでる顔を見られたくないから。

 

 どれくらいそうしていただろう。

 すっと腕が伸びてきて、あたしは抱きしめられた。

 

 力強い腕と暖かくて広い胸に抱きしめられて

 だんだんと穏やかになっていく心。

 遊馬に背中から抱きしめられると、どうしてこんなに落ち着くんだろう。

 身体を抱きしめてくれる腕を、あたしはそっと両手で抱きしめる。



 遊馬。

 あたしがまた落ち込んだりした時は

 こうして背中から抱きしめてね。