伝えたい




ずっと触れたかった。


『野明。十時の方向、気をつけろ』


耳には、安心させてくれる声がいつも聞こえる。
でも…いつからだったんだろう、『声』だけじゃ満足出来なくなった。
もっと近づきたい、もっと触れたい。
そう考えるようになっていた。


でも、この関係を壊したくないから…私はずっと我慢していた。





「おいッ!野明?!どうしたんだよッ」
遊馬にいつものように寮まで送ってもらっていた時。
すぐ横にいるのに、ものすごく遊馬が遠く感じて悲しくなってしまった私は、
遊馬の目の前で突然泣き出した。
「……ごめ…ッ…」
「おいッ、野明?」
「遊馬ぁ…」
私は、遊馬の胸に飛び込んでいた。
遊馬の胸の中は、とても暖かかった。ずっとこのままでいたかった。
「野明?どうしたんだよ?」
「もう少し、このままでいさせてくれない…?」
そういうと、遊馬は何も言わなくなり代わりに私の背に腕を回してきた。

遊馬に守られている。それだけで嬉しかった。

「遊馬…」
「もう落ち着いたか?」
「うん…ありがとう」
「なぁ、聞いてもいいか?」
「何?」
「何で泣いたんだよ」
「あ…」
「俺にもいえないことなのか?」
「そうじゃないけど…」
「けど?」
「遊馬が遠く感じたら…急に怖くなってきたの」
「俺が?」
「うん」
「どーして…こうして隣にいるじゃないか」
「でも、不安だったの…」
「じゃあ、今は?」
「うん、もう平気」
「そうか」
「ありがとう。何かごめんね」
「……野明」
「ん?」
「俺、もっとお前の傍にいってもいいか?」
「え…?」
「今よりも。もっと…傍でお前を守りたい」
「遊馬 …?」


「俺、野明のことがずっと好きだった」


びっくりして声が出なかった。
まさか、遊馬も私と同じ思いでいてくれたなんて思ってもいなかったから。
「お前の気持ちは…?」
「うん、うん …」
涙って、あれだけ出てもまだ出るんだ…変に関心してしまった。
「野明?」
遊馬がちょっとふてくされ気味で私を見た。


早く言わなくちゃ、私も遊馬が好きだったんだって…でも、どうしても声が出ない。
どうしよう、こういう時どうしたら私の想いがあなたに伝わるの?


「遊馬…」
「何だよ」


私は遊馬の頬を両手で挟んで、夢中でその唇に自分の唇を重ねた。



「野明……」
「遊馬。私も好き」
「野明…」
「好き、遊馬。大好き」
そういうと、遊馬の表情がパァーっと明るくなった。
そっか、こんな些細なことでいいんだ。
私のこんな一言で遊馬がこんなにも嬉しそうな顔をしてくれるんだ。
「遊馬?」
「ん?」
「今度の非番にデートしたいな」
「どこ行きたいんだよ?」
「遊園地!」
「わかった」
「楽しみだね♪」
「そうだな」


一歩、そしてまた一歩、ちょっとずつ歩み寄っていく。


                                  
                                 20050324 Novel 徳子様