『Anytime』





 幾度となく一緒に迎えた朝陽。

 それは、まるでいつもと変わらない景色で。

 私にとっても、彼にとっても当たり前のものだった。

 …だから、気がつくのがこんなにも遅れたのだろうか?


「え…遊馬、いないんだ」
「あれ?泉さん、聞いてなかったんですか?」
「……」
 ひろみちゃんが「おかしいなぁ」と首を傾げている
と、傍で話を聞いていた進士さんが
「遊馬さん、昨日話してから行くって言ってたんですよ?」
「私…昨日急遽非番になったから」
「そうでしたか…遊馬さんも急に実家に戻ることが決まったみたいでしたしね…」
「でも、明日には戻ってくるって言ってましたよ」
「そっか…」

 そこには必ず遊馬がいて。
 それが当たり前だったから。いないことに自分がこんなにも寂しいと思うなんて…。
 少し驚いた。

「泉。」
「え?」
 ハンガーでボーっとしていたら、いつの間に隊長が隣にいた。
「…どうかしたのか?」
「あ…」
「……」
 それきり、隊長は何も聞いてはこなかった。
 だから私は…
「なんか…こう…胸の辺りがキュッとするんです。どうしてだろうって…それを考えてました」
「……」
「いつもと同じなのに…何かが足りない気がして…」
「……」
「別に、一緒にいようって約束してたわけじゃないし、私に黙って行ったのだって、
私に会えなかっただけだし、別に……」
「泉」
「はい…」
「その答えは、俺にはわからんよ」
「え……」
 そう。

『この胸のモヤモヤは何でしょう?』

 これが、私が隊長に聞きたかったこと。
 隊長は私が聞く前に、はっきりと言った。
「俺に頼るな」と。
 本当は心のどこかで分かっているんだから。
 ただそれに気がつかない振りをしてるだけなんだから。

「隊長」
「…ん?」
「私…電話、してみます」
「そうか」
「はい」
 私の答えを聞くと、隊長はそのまま歩き出した。
 今になって、よく考えれば…隊長は、私の悩みを聞くためだけに
隣にいてくれたかのようだった。






−−−ルルルルルルッ



「もしもし…遊馬?明けましておめでとう」






=終=



novels 『LOVE SCENE』 如月徳子さま