真実の鏡



 風呂上がり、野明は洗面台の鏡の前でぼんやりと鏡に映る自分の姿を見つめていた。

 遊馬とそういう関係になって数ヶ月。

 何となく、自分の身体が変化した様な気がする。

 明確に言葉では表せない。

 でも、遊馬と身体を重ねてから、確実に変化している自分の身体。

 一体何処が変わったのだろう……。

「何ぼんやりしてんだよ」

 不意に背中から掛けられた声と身体にしなやかに巻きついた腕に、野明は一瞬身体を強張らせた。

「な、何でもないよ」

「ふぅん……」

 鏡越しに映る遊馬の口元が愉悦に歪んだ。

 野明の身体に腕を巻きつけたまま、首筋に口びるを押し付ける。
 柔らかい舌が、野明の首筋をゆっくりと舐め上げる。

「ち、ちょっと遊馬……」

 遊馬の大きな手が野明の胸を包み込んだ。
 指が野明の胸の小さな突起を転がし始める。

「……あ、遊馬……ダメ……」

 胸からじわりと甘い痺れが走る。

「……ん……」

 遊馬の舌が肩へ、背中へと少しずつ降りて、野明の敏感な場所を的確に辿っていく。

 身体に巻きついていたもう片方の手がするリと離れて、野明の身体の線を確かめるかの様に細い腰から太腿へ滑り降りていく。
 
 そして野明の一番敏感な場所へと指が入り込んだ。
 そこは遊馬の指をたやすく受け入れる程、蜜で潤っていた。

「あっ……!」

 指が入り込んだ瞬間、野明が悲鳴にも似た声を上げた。
 
 遊馬の指が野明の中で動き始める。
 焦らしているのか。
 指先だけを軽く、ゆっくりと動かす。

「ん……あ……」

 野明の声が熱を帯び始め、だんだんと甘い吐息へと変化し始める。
 遊馬はそんな野明の様子を鏡越しに見つめている。

 いつの間にかきつく閉じられていた野明の瞳がうっすらと開いた。

 鏡に映っている自分の顔を見た途端、野明が鏡から瞳を逸らした。

 

 野明の瞳に映ったのは、自分ではない自分。

 潤んだ瞳。
 紅潮した頬。
 少し開いた口びるから見え隠れしている舌。



 卑猥な表情をしている自分。



 遊馬の指が、野明のそこから静かに引き出された。
 甘い感覚が野明の背中を一瞬駆け上がる。

 遊馬のそれが後ろから野明のそこにあてがわれた。
 野明のそこを押し開きながら、奥へと突き刺さる。

「あっ……!」

 痛みにも似た激しい快感に、野明の身体がのけぞった。
 身体から力が抜けていく。

 洗面台に手を付いて身体を支えながら
 野明は再び鏡を見た。



 鏡に映っている自分。
 それはもう一人の自分。

 変化したのは身体ではなく
 
 心。
 
「ん……あ……あん……」

 遊馬と繋がっているそこに神経と血液が集中していく。

「あ……あぁっ……!」

 限界が近付いてくる。




 今、野明を映している鏡。

 それは真実の鏡。