おはよう



 ぼんやりと目が覚める。
 外は薄暗くて、まだもう一眠りできそう。
 横に目をやると・・・隣で眠る彼はまだ夢の中。
 寝顔を眺めながら、今この瞬間がまるで夢の中にいるような気持ちになる。


『おはよう』は一日を始める大切な言葉。
 大好きな人には誰よりも一番に言いたい。
 自分が彼の一日のスタートになりたい。
 そうそう、『おやすみ』だって私が言いたいんだ。
 一日のゴールも自分が見届けたい。
 一緒にゴールテープを切りたいじゃない?

 そんな幸せな願いが時々でもかなうようになった今、気付いた事。
 私って・・・もしかして独占欲強いのかな?
 朝も夜も独り占めしたいなんて・・・欲張りなのかな?
『欲張りだろ』
 隣からぼそっと声がした。
『遊馬ぁっ!!起きてたのぉ!!』
 私は飛び起きて彼から離れる。
『なんかぼそぼそ聞こえるから目ぇ覚めた』
 遊馬はまだ眠そうに目をこすってる。
『な、なんて聞こえたの?』
 どこまで聞かれたのか気になるじゃない!!
『ん〜、欲張りなのかな?とかって。その前はよく聞こえなかった』
 遊馬は、信号機のように赤くなったり青くなったりする私を布団の中に引き戻す。
『気にするな、俺も欲張りだ』
 きつく抱き締められた腕の中で聞いた彼の声が私の眠りを誘う。
『この状況で寝るなよ・・・』
『だってあったかいんだもん・・・って、どこ触ってるんですか?』
 遊馬の手が私の身体を撫でてる。
『え?いいじゃん』
『で・・・どうしてパジャマ脱がせてるんでしょうか?』
 さすがにこの状況はまずいので逃げようとする私の耳元に囁かれたのは・・・
『おはよう、野明』

 ・・・・・・負けました。
 今一番欲しい言葉を貰っちゃったら、もう抵抗なんてできないでしょ?
『おはよう、遊馬・・・』
 私も大切な言葉を返してから目を閉じる。

 私からの『おはよう』に答えてくるキスを受けながら、
 朝日が昇るのをちょっと待っててと願うのは・・・これは無理なお願いかな?



 ―終わり―