ココロノアイカギ
『野明・・・一緒に暮らさないか?』
遊馬からの、あまりに思いがけない一言。
私が現在暮らしてる篠原の女子寮は、入寮期間が3年間までと決められている。
私の場合、警察からの出向期間も含めて計算するという事に気付いた時には、退寮期限が
3ヵ月後に迫っていた。
ひと足先に一人暮らしを始めた遊馬に手伝ってもらえたらと思っていたのに。
それがまさか『一緒に暮らさないか?』なんて・・・
遊馬のアパートに帰った私達は、いつもどうりに食事とお風呂をすませると・・・ベッド
の端に二人肩を並べて座った。
『・・・そんなに驚いたか?』
遊馬は肩をすくめて苦笑いしてる。
混乱したままで落ち着かない私は、パジャマの裾を握り締めてうつむく。
『・・・遊馬は、いつから考えてたの?その・・・私と暮らしたいって。』
『・・・つい最近。これ以上野明と離れて暮らすのは無理だって気がついた。』
私の手に重なる遊馬の大きな手のひらがあたたかい。
『野明を寮まで送るたびに「帰したくない」っていつも思ってた・・・』
一瞬言葉を止めた遊馬が立ち上がると・・・私の前にひざまずいて顔を近付けた。
『野明、俺達もう・・・離れて暮らすほうが不自然だと思わないか?』
―――遊馬が密かに抱えていた想いが、私にまっすぐぶつかってくるのがわかる―――
嬉しいのに、こんなに幸せなのに・・・どうして目の前の遊馬の顔がぼやけて見えないん
だろう・・・
私・・・泣いてる?
『・・・やっぱり急すぎたな。ごめん、この話は聞かなかった事にしてくれるか?』
耳に届く遊馬の声はなんだか寂しそうで・・・私の「涙」が誤解されてる事に気付く。
『・・・違うの!!』
私は目の前がぼやけたままで遊馬にしがみつく。
「離れたくない」と隠さずに本当の気持ちぶつけてくれた遊馬に、私もちゃんと自分の気
持ちを伝えなくちゃ・・・
『遊馬、私・・・引っ越し先決めたよ・・・』
照れくさくて、遊馬の腕の中でうつむいたままでの告白。
『そっか・・・引っ越し手伝ってやるから教えろよ?』
『・・・○○町××・・・』
小さな、でもはっきりとこの部屋の住所を呟いた。
その瞬間、私を包む腕の力がぎゅっと強まる。
『・・・キャンセルは受け付けないからな?』
『うん・・・よろしくお願いします///』
目を閉じてキスした瞬間に、二人の心の合鍵が触れ合う音がした・・・