あなたがくれるもの
12月24日、ただいま夜の10時。
遊馬と一緒に暮らしはじめて最初のクリスマスイブに、私はアパートで一人お留守番。
新システムのテスト結果の提出期限は26日。
その日は今年の仕事納めになってるから、ラボのみんなは連日泊まりがけで頑張ってる。
テストパイロットの私は、毎日自宅に帰って休むようにと言われてるから、遊馬とは同じ職場にいるのにすれ違いの毎日。
私の担当したテストは全部終了したものの、私が出したデータを解析する遊馬達の作業はまだ残ってるけど・・・。
『明日も仕事だし・・・もう寝ようかな。』
戸締まりを確認して、部屋の明かりを消そうとしたその時・・・
――――ピンポーン♪
こんな時間に誰?
覗き穴から見えたのは・・・
『遊馬!!おかえりなさい』
あわてて鍵を開けて出迎えた。
遊馬がお風呂を済ませてソファに座ってから、私も隣に腰を下ろした。
『遊馬・・・これ、クリスマスプレゼント。』
大きな包みを手渡す。
『ありがと。今開けていい?』
私が頷くと、ガサガサと包みを開けていく。
今年のプレゼントはボストンバッグとお揃いのスーツバッグ(スーツをハンガーにかけたまま入れるバッグ)。
最近泊まりがけの出張が増えた遊馬。
今まで使ってたボストンバッグが壊れたと話してるのを聞いて、休みの度に内緒で探してたんだ。
『タイミングいいな、さっそく使わせてもらうよ。』
『え・・・遊馬、 出張あるの?』
不安そうな私を見て、遊馬は慌てて立ち上がると鞄から封筒を取り出した。
『はい、俺からのクリスマスプレゼント。』
手渡された封筒の中身は、北海道行きの往復チケット。
それも、私と遊馬の二人分。
『すごい・・・取れなくて諦めてたのに。これ・・・どうやって取ったの?』
『ネットをこまめにチェックして、キャンセル待ちしてた。チケットが取れた時点で、苫小牧の親父さん達にも電話してあるよ。』
今年は、GWもお盆もチケットが取れなくて・・・今回のお正月もダメで諦めてた。
遊馬は、ずっと里帰りできなかった私を気遣ってくれたんだ。
『野明と同棲するって親父さん達に話した時、電話だったろ?やっぱり直接頭下げたくてさ。』
私の肩を抱いてゆっくり話す遊馬の声が、この数日の寂しさを溶かしていく。
『キャンセル待ちで贅沢言えなくてさ、27日に行って30日に帰ってくるから・・・年越しはこっちでな。』
『うん・・・初詣、二人で行こうね。』
『あぁ。』
埋め立て地の片隅で遊馬と出会って、今こうして同じ時間を過ごせる巡り合わせを素直に感謝してる。
――いつでも『プラス』の感情でいられないのはわかってる。
ヤキモチ焼いちゃったり、寂しさで思いつめたりする『マイナス』の感情も、きっと全部が『遊馬を好き』という事なんだと気付いた。
すれ違う時間の寂しさも、大事に思われていると感じる瞬間も、触れるぬくもりも。
遊馬がくれるものすべてが愛おしい。
『ありがと・・・。』
遊馬のぬくもりをもっと感じたくて、ぎゅっと抱きつく。
・・・クリスマスだもん、たまには甘えてもいいよね?
―終わり―