雨に隠れて…
七夕は「雨」、天気予報はぴたりと当たった・・・それもひどい土砂降り。
実は今夜、私と遊馬も「織り姫と彦星」になるところだった。
私達の邪魔をするのは「天の川」じゃなくて「お仕事」だったけど。
今日、遊馬は早朝から大阪に出張だった。
本来は「泊まり掛け」になる仕事をどうにか終わらせ、東京駅に着いたのが夜の10時過ぎ。
遊馬の車で最寄りの駅に迎えに行って、二人で部屋に戻った時には11時を過ぎていた。
『しっかしよく降るよなぁ』
お風呂上がりの遊馬は、ニュースの天気予報を見ながらぼやいてる。
『ねぇ、織り姫と彦星も天気予報見たりするのかなぁ?』
『なんだそりゃ?』
・・・やっぱり呆れられた。発想がお子様ですいませんね。
『だって年に一度しか逢えないんだよ?絶対お天気気にしてるよ。』
『野明はそんな心配しなくていーんだって。』
遊馬は私を抱き上げてベッドに運ぶと一緒に横になった。
『織り姫と彦星だって、雨降りのほうが都合いいはずだぜ?』
『どうして?雨降ったら逢えないじゃない。』
『あのなぁ・・・晴れてたら、デートの一部始終を俺達に見られて落ち着かないだろーが
。』
そう言うとベッドサイドを残して、部屋の明かりを落としてしまった。
『でも・・・織り姫と彦星ってこんな事してるのかなぁ?』
『「こんな事」って、どんな事?』
遊馬って、わかってて意地悪な事言うんだよね。
『野明・・・彦星だって男だぜ?一年ぶりに逢う惚れた女目の前に、何もしないなんてあ
りえないんだよ。』
耳元に低い声が心地よく響く。
『・・・私達、毎日一緒にいるけど?』
かなわないのを承知で、私もちょっと意地悪を言ってみる。
『俺は気が短い。一年どころか一週間も、一日も待てないんだよ。』
そう言って私の「彦星」は、小さな明かりをそっと消した・・・。
―――天上の恋人達も、雨に隠れて二人の時間を過ごしてるのかな?
おわり