Fly me to the Moon 
  

 私を月へ連れて行って。
 そして、星々の間で遊ばせて。
 私に見せて欲しいの。
 つまりね、私の手を握って欲しいってこと。
 つまりそれは、私にキスしてってことなの。

 

 私の心を歌でいっぱいにして
 ずっといつまでも歌わせてね
 あなたは私のあこがれなの
 大好きなの、尊敬しているの
 それはね あなたに愛してほしいってことなの
 それはね あなたが大好きってことなのよ





 夜中にふっと目を覚ます。
 やけに部屋の中が明るくて、まだ眠気の残る目をこすりながら窓の方を見ると、ブルーのカーテンが青白く輝いて。

 あたしは、隣で寝ている遊馬を起こさないように、ベッドから起き上がり、ベランダにゆっくりと足を進めた。
 そっとカーテンを開けると、白く柔らかな真珠色の光が差し込む。
 窓を開けてベランダに出て、夜空を見上げると、まぁるいまぁるい月。

「……綺麗」

 きっと気のせいなんだろうけど、月が大きく見える。
 遊馬に言ったら、『科学的に考えても……』って夢のないことを言うんだろな。 

 さあっ、と頬に当たる風が気持ちいい。
 まるで太陽の下でするように、あたしは両手を思いっきり頭上に上げて身体を伸ばした。
 
 日光浴ならぬ月光浴。

 腕を下ろして、ゆっくり振り返ると、揺れるカーテンの向こうで、遊馬はぐっすり眠ってる。
 起きる気配は全くない。

 

 特車二課にいた時には全く想像もつかなかった毎日。
 
 こうして、一緒に暮らし始めたこと。
 こうして、寝顔を見られること。
 
 『おはよう』
 『おやすみなさい』のキスが毎日出来ること。

 あたしの作ったご飯を『美味しい』って一杯食べてくれること。
 何気なく、髪を撫でてくれること。

 眠るときに、背中から抱きしめてくれること。



 すべてのことが嬉しい。



 遊馬がむにゃむにゃ言って、もそもそと寝返りを打った。
 起きるかな?

 と、思ったら、すっと手が伸びて、何かを探してシーツの上を彷徨い出した。
 
 もしかして、あたしを探してる?
 その仕草が可愛らしくて、思わず笑ってしまった。

 あたしがベッドに入り込むと、彷徨っていた遊馬の手があたしを見つけた。
 そのまま、あたしの身体に腕を絡ませて、大きな溜め息を一つ。

 そして、また夢の中。

 子供みたいな仕草に、口元がほころんでしまう。

 遊馬に抱きしめられたまま、窓の方に身体を向けると、さっきと変わらない鮮やかな月灯りが差し込んで。
 規則正しい遊馬の寝息を数えているうちに、あたしも何だか眠くなってきた。

 心地いい風と柔らかな月灯り。



 ねぇ、遊馬。

 毎日、抱きしめてね。
 いつも、笑っててね。
 そして、キスしてね。

 大好きな遊馬の体温を背中に感じながら、あたしは眠りにつく。


 
 明日また、『おはよう』のキスしようね。